親権者・監護権者の変更
1 親権者・監護権者の変更は許される?
離婚の際にいったん親権者は決まりますが、その後、親権者・監護者の生活環境・収入等の変化によって、子どもの利益と子どもの福祉にとって必要な場合のみ、親権者と監護者を変更することが可能です(民法819条)。
親権者・監護権者の変更は、あくまで子の利益と子の福祉のために必要がある場合に認められるものなので、仮に元夫婦間で「親権者を変更しない」という合意があったとしても、そのような合意は無効です。
2 どうすれば親権者・監護権者の変更ができるか?
(1)親権者の変更
親権者を変更するときは、家庭裁判所に親権者変更の調停・審判を申し立てる必要があります(民法819条6項)。元夫婦が合意をしただけでは親権者を変更するこ親権者が変更された場合、戸籍も変更が必要になります。調停成立や審判確定から10日以内に調停調書や審判調書を市区町村役場に提出して手続きを行ないます。
(2)監護権者の変更
監護者の変更は、父母の合意があれば、家庭裁判所に通さずとも話し合いだけで行なうことが可能です。市区町村役場への届出も不要なため、話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に監護者変更の調停か審判を申立てるようになります。
3 どのようなときに親権者や監護権者の変更が認められるのか?
親権者・監護者の変更をするために調停・審判を申し立てた場合、どのような基準で判断されるのでしょうか。
基準は「子の利益のために必要がある」(民法819条6項)かどうかですが、具体的な事情としては、以下のようなものが考えられます
親側の事情
①監護体制
経済状況、居住環境、教育環境、家庭環境など、子供を健全に養育できる環境が整っているかどうか
②監護意思
その親が子供を養育していく意思があるかどうか
③心身の健全性
その親に子育てができる能力・資質があるかどうか
子供側の事情
①子の年齢や心身の状況
子供の年齢が低いほど母親が親権者とされやすい傾向にあります(母性優先の原則)
②環境の継続性
子供の生活環境が頻繁に変更されるのは子供の養育上好ましくないので、できるだけ現状を維持しようという傾向があります。子供がどちらの親に育てられたいか。子供の意思は、年齢が上がって判断能力がつくほど重視される傾向にあります。実際、15歳以上は意見を聞くことになっています(家事審判手続法65条)。
③子の意思
子供がどちらの親に育てられたいか。子供の意思は、年齢が上がって判断能力がつくほど重視される傾向にあります。実際、15歳以上は意見を聞くことになっています(家事審判手続法65条)。
もっとも、親権者の変更が認められるためには、高いハードルが存在します。一度親権者を決めている以上は、後になってコロコロと世話を見ている親権者を変更することは、子供にとって大きな負担になるからです。
このため、親権者の変更が認められるためには、親権者を変更しなければならない特別の事情が必要になります。
4 親権の喪失とは?
親権者に子どもを養育する者としてふさわしくない場合、子どもの親権を喪失する可能性があります。例えば、子どもに対し、日常的に虐待が加えられていたことを理由に、親権喪失が宣言された場合もあります。ここで知っておきたい事は、仮に親権の喪失が認められた場合であっても、自動的にもう一方の親が親権者になるということではない点です。もし、親権を保有することを希望するのであれば、家庭裁判所に親権者変更の申し立てを行なう必要があります。