ニュースレター
ニュースレター KabashimaLawJournal 2017 年3月発行 Vol.11
権利の実現-民事保全-(弁護士 大野智恵美)
■ 【X社からの相談】
X社の担当者:我が社は、製品「A」を製造販売している会社で、平成28年2月1日から東京の小売業者Y社と新しく取り引きするようになりました。契約書では、Y社から注文書をもらって、我が社が2週間以内に納品し、納品完了分につき毎月月末締めで翌月月末払いとなっていましたが、Y社は、支払期限の平成29年2月28日を過ぎても、売買代金120万円を支払ってくれません。担当者がY社に連絡しても、担当者不在でした。Y社と取引がある他の会社から聞いた話では、Y社は、X社の他にも支払いをしていないとのことでした。そこで、何とか売買代金を回収したいのですが、どうすればいいですか?
■ 回答
このようなケースの場合、X社としては、①支払請求(内容証明郵便を送る)をし、Y社が支払わなかったときは、②訴訟を提起し、③判決が確定した後、④Y社の財産(※差押え時点で存在するY社名義ものに限られます)を差し押さえて回収するという流れになります。
もっとも、裁判が確定するまでには、多少の時間がかかります(どんなに急いでも、判決が出るまでに1か月以上はかかります)。
また、X社のケースでは、Y社は、連絡も取れず、他にも支払いをしていないようですので、もしかしたら、Y社が財産を隠してしまったり、他の会社とY社の財産を取り合うことも考えられます。
そこで、より確実に売買代金を回収するため、以下のような配慮が必要です。
★POINT①:仮差押え
X社としては、X社の権利(120万円)を保全するために、Y社の財産を仮に差し押えることができます。
※ただし、X社の権利が確定していない段階で仮にY社の財産を押さえるものですので、担保金(万が一X社の権利がなかった場合、Y社に損害が生じていれば、その損害を賠償するためのお金です。請求金額の10~30%が相場になります。)が必要になります。
★POINT②:事前の情報収集
ケースを離れて、事後的な対応ではなく事前の対応の話になりますが、仮差押えや確定判決後の差押えをする場合、X社の方でY社の財産を把握しておく必要がありますので、取引前や取引中にY社のメインバンクやY社の取引先(Y社の売掛金債権を把握する)を確認しておくと、売掛金の回収の可能性が高まりますので、X社はそのような配慮をすべきだったといえます。
また、取引前にY社の経営状況を調査(例えば、帝国データバンクの利用等)し、Y社の経営状況に応じて、当初から少額の取引にしておくと、万が一の場合、未回収の金額も膨らみにくいといえます。
いずれにしても、未払いの状況になる前の段階でどれだけ相手の財産の情報を把握できているかで、回収の可能性が違ってきますので、今後、新規の取引を始められる際は、是非、十分な情報収集をされてください。
個人の方向けセミナーのご報告(弁護士 竹田寛)
■ はじめに
平成29年2月17日に当事務所の入っているビルの7階ホールにて、個人の方向けセミナーを開催いたしました。この企画は、平成28年12月から開始させましたので、今回が第2回目の開催でした。今回のテーマは、「もめない遺言書の書き方と信託」というものでした。
■ 遺言書とは何か?
当セミナーでは、まず、そもそも「遺言書」とは何か?その種類や、有効要件、書き方、作成費用等について、説明をさせていただきました。
ご自身の遺志について、単に書面にすればよいわけではない、という認識はあっても具体的にどう書けばいいのか、ご存知でなかった方もいらっしゃったようです。少しでも参考になったのであれば幸いに思います。
■ もめる遺言書
次に、「もめる遺言書」についての解説を行いました。せっかくご自身の遺志を記載しても、法的にその通りに実現することが出来ず、裁判等の紛争を相続人の方々に残してしまっては本末転倒です。そのため、「遺留分」の制度について、重点的に解説をさせていただきました。
また、会社の代表者の方も出席されておりましたので、経営承継円滑化法によって定められた、民法の遺留分の特例に関する説明もさせていただきました。
■ 信託
最後に、信託についての解説をさせていただきました。信託とは、「委託者が受託者に財産権の移転などを行い、受託者に対して一定の目的 に従って、財産の管理や処分などをさせること」をいいます。要するに、財産を預けて、管理や処分をお願いする、というものです。
ご自身の遺産を、遺志の通りに使ってもらいたい、という場合には、信託の制度を利用することが有用です。遺言の場合、相続人は遺産を取得した後、自由に使用・処分ができるのですが、信託ではその使用・処分の方法を指定することができるためです。
■ セミナーについて
当事務所では、今後も個人の方に向けて、相続等に関するミナーを開催させていただく予定です。相続は会社経営者の方々も頭を悩ませる問題でしょう。皆様、是非セミナーにご参加ください。
企業法務セミナーのご報告(弁護士 松﨑広太郎)
■ はじめに
平成29年1月20日に当事務所の入っているビルの7階ホールにて、企業法務セミナーを開催いたしました。
今回は、「契約社員が正社員になる?~平成30年問題~」と題して、法改正の相次ぐ有期契約社員を巡る法律問題について、講演をさせて頂きました。
■ 有期契約社員
「有期契約社員」とは、例えば1年単位で契約の更新をするなど、期限を切って労働契約を締結している従業員を言います。会
社では「契約社員」と呼ばれることが多いと思います。
■ 平成30年問題
平成30年4月1日より、有期契約を更新し、5年以上勤務してきた契約社員が無期契約社員(終身雇用)に転換する権利を取得することになります。そのタイミングが平成30年であることをさして、これを「平成30年問題」といいます。
実際には細かな条件があり、ざっくりと表現して、平成30年問題なわけですが、詳細について、セミナーを聞き逃した方については、個別に担当弁護士松﨑までお問い合わせください。
■ 有期契約社員を巡る情勢
この平成30年問題だけではなく、法改正により、有期契約社員を雇い止めする際の法的な要件が法文化されたりと、有期契約社員を巡る法律問題は複雑化しています。
一昔前のように、「契約社員はいつでもきればいい」という問題ではなくなっております。採用するときにも、更新を拒絶するときにも慎重に対応する必要が御座います。当セミナーでは、具体的な対策方法についても、簡単にご説明させていただきました。
今後は、有期契約社員に関する紛争は増加していくことが予想されます。有期契約社員の雇用問題等についてお困りの際は、是非とも当事務所にご相談ください。
■ セミナーについて
当事務所では、今後も労務等に関する企業法務セミナーを開催させていただく予定です。同じ悩みを共有できる場でもございますので、皆様是非ともご参加下さい。
弁護士雑記(自己紹介):弁護士 福田康亮
■ はじめに
平成28年12月よりかばしま法律事務所に入所しました福田康亮(ふくだこうすけ)と申します。生まれは広島県福山市で、九州大学法学部を経て、岡山大学法科大学院を修了しました。司法試験合格後は、長崎市で司法修習を行い、ここ久留米の土地で、弁護士としての第一歩を踏み出すこととなりました。
■ 弁護士を志したきっかけ
テレビドラマで登場する弁護士は壮絶な過去を持っている人が多いですが、私はいたって普通の家庭に育ち、いや、こうやって弁護士になるまでに支えてもらえる環境があるだけ恵まれているのでしょうが、私は特に大きなきっかけがあって弁護士を志したわけではありません。
恥ずかしい話ですが、原点を辿ると、子供のころ、日曜日の朝テレビで観ていた戦隊物などの“正義のヒーロー”への憧れにあったのだと思います。他者を助けることに対する憧れです。映画でも小説でも漫画でも、主人公やヒロインより、他者をかばって死んでいくような登場人物の方が好きだったりします。その憧れからか、小学校低学年の頃から、高校を卒業するまでの間、私の夢は警察官になることでした。
しかし、警察官になった時に役に立つと思って入った法学部で、民法というものの存在を知りました。警察官志望ということもあり、刑事や裁判もののドラマは幼い頃から見るのが好きだったのですが、その影響もあり、法律といえば刑法というイメージがあった私には、民法はとても新鮮なものでした。そして、現実には、民事上の紛争の方が、犯罪に巻き込まれることよりもよっぽど身近なものであると感じました。
犯罪から他者を護るという意味で警察官を目指していた私は、民法を知ることで、民事上の紛争から他者を護るということに関心を持ち、これが弁護士という職に興味を持ったきっかけでした。
当時、警察官と弁護士のいずれを目指すか悩んでいた私に、決定打ではなかったものの背中を押すきっかけがあったのですが、紙面の関係上、割愛します。機会があれば、いつかまた。
■学生時代の取り組み
私は、中学生の頃、バレーボール部に所属しておりました。また、大学生の頃には、法律相談部と空手道部に所属しておりました。
大学3年時に、個人的にクロスバイクで九州を一周しました。時間のある今しか挑戦できないことをやりたい、という思いからです。辛くもありましたが、自分の将来をじっくり考える機会にもなりましたし、人の優しさに触れる機会にもなりました。
体力、好奇心には、自信があります!
■ おわりに
今、弁護士として歩み始め、民事上の紛争を抱えた相談者の方から、お話を聞くようになりました。
私の目標は他者を護ることですが、一言に他者を護るといっても決して簡単なことではありません。何を持って護ることになるかも、人によっても事件によっても全く違うものだと思います。しかし、この目標に少しでも近づくため、日々勉強し、方法を考え、精進していく所存です。
今後とも、ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願いいたします。