ニュースレター
ニュースレター KabashimaLawJournal 2018年4月発行 Vol.16
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パワハラについて(弁護士 今村衣里)
■はじめに
近年、『パワハラ』問題は、広くスポーツ界、芸能界などでも取り沙汰され、その責任について幅広く議論がなされるようになりました。今回は、そんなパワハラのうち、とりわけ職場内で生じるパワハラについて解説したいと思います。
■『パワハラ』って何?
そもそも、どういった行為がパワハラに当たるのでしょうか?この点、厚生労働省が平成24年3月に出した提言書によると、パワハラとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係など職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいうとされています。典型的な類型としては、次の類型が挙げられます。
①暴行・脅迫(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
③隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過度な要求)
⑤業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
⑥私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)
上記類型は、あくまで典型的なものをまとめたものになりますので、上記行為に該当しなければ『パワハラ』にはあたらないというわけではないことに注意する必要があります。
■『パワハラ』で慰謝料!?
ひとえにパワハラといっても、その態様・程度は千差万別で、したがって、その責任もモラル上の責任に留まるものから、会社内での懲戒処分を受けるもの、当事者間で慰謝料を発生させるものまで様々です。
特に、当事者間で慰謝料の支払義務を発生させるようなパワハラについては、東京地裁平成24年3月9日判決が参考となります。当該判決は、パワハラが不法行為を構成するためには、質的にも量的にも一定の違法性を具備していることが必要であると論じた上、パワハラが不法行為を構成する場合について、「パワーハラスメントを行った者とされた者の人間関係、当該行為の動機・目的、時間・場所、態様等を総合考慮の上、『企業組織もしくは職務上の指揮命令関係にある上司等が、職務を遂行する過程において、部下に対して、職務上の地位・権限を逸脱・濫用し、社会通念に照らし客観的な見地からみて、通常人が許容し得る範囲を著しく超えるような有形・無形の圧力を加える行為』をしたと評価される場合に限り、被害者の人格権を侵害するものとして民法709条所定の不法行為を構成するものと解するのが相当である。」と判示しています。
なお、パワハラが職場内で行われた場合、会社は、「労働者にとって快適な就労ができるように職場環境を整える義務」を怠ったとして、使用者責任や債務不履行責任を問われる可能性があります。上記裁判例においても、会社は当該行為者として連帯して慰謝料支払義務を命じられました。
このようにパワハラ問題は、職場でのパワハラは、従業員の仕事への意欲や自身を失わせ、ときには心身の健康や命にすら危険を及ぼすだけでなく、会社にも法的責任を生じさせる行為です。これを機会に、今一度、従業員への周知や社内制度の構築をご検討されてください。
柳川運輸株式会社 下川暢洋 代表取締役社長 インタビュー
■ 時代の変化への対応
松本(かばしま法律事務所所属弁護士)
貴社が設立されてから現在まで、世の中にどのような変化があり、それに対してどう対応してこられたのでしょうか。
下川社長(柳川運輸株式会社 代表取締役社長)
当社の昭和28年2月1日の設立から60年以上が経ちました。戦後まもなくにしては非常に珍しいことなのですが、当社は最初から株式会社として設立しました。
当社が発展してきた時代的背景としては、一つは大川の家具を東京に運送するという長距離輸送を担ったこと、一つは高度経済成長期であったことが考えられます。
東京に運送することとなったきっかけは、伊勢湾台風です。当時、大川の家具は主として鉄道で運送されていました、台風の影響によって、鉄道で運送することができなくなりました。その際、当社がトラックによる運送を行うという対応をしたのでした。
全国的にも、長距離をトラックで運送するということが珍しい時代であった中、この地区では、当社がトラックで東京まで家具を運ぶという対応に一番早くとりかかりました。
関東側でも大型のトラックが九州から来てくれるといことが珍しかったようで、往路でも依頼を受けるようになり、行きは家具、帰りは蛍光灯の運送といった具合に、事業の幅が広がっていきました。
■苦労ややり甲斐
松本
事業を展開されるに当たって、苦労されていることはございますか。
下川社長
石油の価格が高騰した時期がありました。社会的に物の物価は上がったのに、運賃は上がらず、打撃を受けました。
そのため、節約という対策を採ろうと考え、省エネ運転講習会を行ってきました。職員、社員、ドライバーに、年に2、3回したこともあります。このような対策をした結果、2割ほど燃料コストが下がりました。
また、運送業界に対し、次々に新たな規制がなされておりますので、それに対応していくことに苦労を感じます。例えば、最大で運転を4時間した場合、一度30分以上の休憩をとらなければならないことや家を出てから24時間以内で9時間以上運転させてはならないこと等、現場の実態にそぐわないような様々な規制が作出されています。文句ばかり言っていられないので、現場のやり方を変えて対応していますが、やはりそれに苦労を感じてはいます。
松本
事業を展開されるに当たって、やり甲斐を感じるのはどのようなところでしょうか。
下川社長
運送事業は、社会生活のなかで非常に大事な役割を担っていると自負しています。
例えば、災害時、被災地に物資が必要となり、いざ物資を送ろうとする際には、一番に問題となるのが、運送手段の確保です。
近年、運送事業の活躍ぶりは東日本大震災や熊本・大分の震災時には、ニュース等で大きく取り上げられることではありますが、日常では忘れられがちです。
空気のように、それがないと生きていけない、しかし存在して当たり前という存在で、社会生活の根本を支えている、運送事業という仕事に、私はやりがいを感じています。
■事業の展開
松本
今後、貴社の事業はどのように展開していくのでしょうか。
下川社長
当社の家具の出荷量は、日本でトップレベルです。これを続けていきたいです。
現在、柳川運輸では、延べ約1万㎡となる規模の倉庫を全国に所有しています。東京で700坪、福岡で1800坪と1200坪、大川で5000坪、柳川で700坪と600坪といった内訳です。
また、佐賀県の千代田にも既に倉庫はあるのですが、もう1棟倉庫を作る予定です。
これらを利用して、よりいっそう多くの注文を受注していきたいと考えています。
■ 当事務所のサービス
松本
当事務所で印象に残ったサービスなどがありましたら教えてください。
下川社長
当社がかばしま事務所のなかで、最も長い顧問先であると聞きました。
債権回収、取引先の倒産や交通事故、就業規則の見直しなど様々なご相談をしています。
今後も今まで通りのお付き合いをできればと考えているのですが、特に最近では、セミナーや講演会を多数開催されており、その内容も非常に興味深いものばかりです。
今後、このようなセミナー、講演会に積極的に参加していきたいと考えています。
また、白秋祭にも参加する等、様々な方面で積極的に活動されておりすごいなと感じています。
■ 理念やこだわり
松本
理念やこだわりをお聞かせ下さい。
下川社長
当社は、少なくとも私が生まれたときから、死亡事故がゼロです。60年以上という長い期間事業を行ってきている会社としてはなかなかできないことだと思います。
これは、当社が、ドライバーに認める高速道路の利用範囲を長めに設定したり、フェリーの利用を許可をしたりといった体制を、同業者よりも早く取り入れてきたためであると感じます。
このような結果が現在も続いていることを誇りに思います。このまま、この記録を継続していきたい、と考えております。
弁護士雑記(東京観光):弁護士 福田 康亮
■東京観光をしてきました
弁護士の福田です。今回は私が先日行った東京観光について、末筆ではありますがご報告させていただきます。
弁護士を含め法曹三者は、司法試験に合格した後、実際に働き始める前、「司法修習」という研修期間を過ごします。ここで知り合う同期の友人たちとは毎日一緒に研修を行うので、結構仲良くなるのです。研修を終えて別々の地で働き始めてからも、良き友人・ライバルとして関係が続きます。 そんな中、同期会が開かれるとのことで、修習同期の友人たちに会いに東京まで行ってきました。東京はあまり行く機会がない私ですので、この際ついでにと思い、東京を観光してきました。
■皇居観光
まず行ったのは皇居。皇居の周りはランニングコースで有名という話はテレビの情報で知っていましたが、ほんとに多い。この日も、何かの大会があったのか、多くの人が走っていました。気になったのは、そのランニングコースに埋められている県花のプレート。各都道府県の県花が一つ一つ皇居の周りを囲むように紹介されていました。
ご存知の方も多いとは思いますが、福岡県の県花は「梅」。気になったので調べてみると、由来は大宰府の菅原道長公が京を離れる際に作った惜別の唄にあるらしいですね。
■浅草寺とスカイツリー観光
翌日行ったのは、浅草寺。観光客でいっぱいでした。特に外国人。「雷門」と書かれた大きな提灯の裏側を見て初めて知りましたが、「雷門」って略称なんですね。正式には、「風雷神門」というらしく(例の赤提灯の裏側に「風雷神門」と書かれていました)、
その提灯がある門の両端にはちゃんと風神像と雷神像がありました。しかしそうすると当然出てくる疑問として、「どこに行った?風神・・・」という疑問でして、なぜ「風雷門」でもなく、「雷門」なのか。調べましたが、よくわかっていないようで、「風の神 雷門に居候」という句まであるらしく、少しかわいそう(笑)。
次に向かったのは、その浅草寺から見える東京スカイツリー。見えるので近いと思って歩いて向かいましたが結構遠い(笑)。近くまで行ってその大きさに驚かされました。634メートルの高さはさすがです(ちなみに、634メートルなのは、東京付近の旧国名「武蔵」の語呂が由来らしいです)。展望台まであがるとさすがの絶景。
普段、テレビ等で見ていて知っている情報でも、実際に行ってみるといろいろ気づいたり、疑問に思ったりするものだなとあらためて感じました。仕事でもこの感覚を忘れないようにして、固定概念にとらわれないよう注意していきたいと思います。