弁護士コラム
労働問題Q&A【3】
みなさんこんにちは。かばしま法律事務所の弁護士 泊祐樹です。
本日は、労働問題Q&Aの第3回について、掲載させていただきます。
第3 解雇手続(改正危険度小)
Q23 弊社では現在、1名の正社員の懲戒解雇を考えています。懲戒解雇の場合は労働者の責に帰すべき解雇ですから、即日解雇をし、かつ解雇予告手当を払う必要もないのですよね?
A23
確かに労基法20条1項では、労働者の責に帰すべき解雇では、解雇予告や、解雇予告手当の支払いは不要であるとしていますが、労基法20条3項で、行政官庁の認定を受けなければならないとしています。ここでいう行政官庁は労働基準監督署のことです。よって、懲戒解雇に伴い、解雇予告手当さえもカットする場合には、原則懲戒解雇の前に除外認定を受ける必要があります。
Q24 その除外認定は簡単に通るのでしょうか
A24
簡単ではありません。解雇予告手当は、解雇される従業員の1か月分の生活保障の趣旨ですので、それさえも奪っても構わないほど、従業員の責任が大きいときにしか認定はおりません。
具体的には、事業場内での窃盗や業務上横領など、職務に関連した犯罪行為を行っている場合のように非常に大きな責任事由がある場合に限定されています。
Q25 弊社では懲戒解雇をした場合には、退職金は一切支給しないと就業規則に定めています。ですので、懲戒解雇をしたものに対しては退職金の支給は必要ありませんよね
A25
これは懲戒事由の重大さによります。そもそも懲戒解雇自体、自由になせるわけではなく、就業規則の懲戒事由に該当し、さらに懲戒解雇を行うだけの客観的合理性と社会相当性が認められる場合に有効に懲戒解雇を行うことができます。
さらに、裁判例上は、懲戒解雇が有効な場合でも、退職金を没収するためには、長年の功労を没却するほどの責任事由が必要だとされています。そのため、退職金を一律没収にするのではなく、一部支給することも含めて慎重に検討する必要があります。