弁護士コラム

敷金規定の新設について-債権法改正対応シリーズ賃貸借その3-

Q 敷金の規定とは何ですか。

A 改正により、敷金の定義が明文化されました。

敷金とは、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」(民法622条の2第1項)という定義が民法上に記載されるに至りました。

賃貸人が取得した敷金は、賃貸借契約が終了し賃借人が目的物を賃貸人に返還したとき(同項1号)または賃借人が賃借権を適法に譲渡したとき(同項2号)に、精算して残額を賃借人に返す必要があります。また、賃貸人は賃借人に対して発生した金銭債権について、敷金から優先して弁済を受けることができます(同条2項前段)。具体的には、未払い賃料や賃借人の帰責事由(賃借人がわざと傷つけたり過失により傷つけた場合)により物件を損傷した場合の退去時の修繕費を敷金で充てることができまず。一方で、賃借人の側から例えば未払い賃料などについて、敷金を充てるように請求することはできません(同項後段)。

 

Q 保証金や権利金などの名目にかえれば、この規定の適用をまぬがれることができますか

A 名目を問わず、賃借人の賃貸人に対する債務を担保する目的があれば、民法にいう「敷金」に該当します。そのため、権利金や保証金などの名目を変えるだけでは、「敷金」とされる可能性があります。

ポイントは、債権担保目的です。担保とは、債務者の債務不履行に備えて債務の弁済を確保する手段としてあらかじめ債権者に提供しておくもののことをいいます。詳しくは今後の裁判例の蓄積を待つ必要がありますが、例えば保証金や権利金の名目でも、契約全体を見て、賃借人の賃料未払い分や退去時の原状回復費用について、賃借人に対して支払い請求をせずに、事前に納めた保証金や権利金を充てることで、賃貸人が優先的に弁済を受けることができるような仕組みになっていれば、債権担保目的があると判断され、「敷金」に該当する可能性があります。

つまり、契約書上は「権利金」となっていても、その実質から「敷金」であると判断され、清算後に返還義務のあるもの、と判断される可能性があるのです。

 

Q 特約で民法とは異なる契約をすることはできますか。

A 民法の規定は任意規定なので、当事者同士で民法の規定と異なる特約を結ぶことは可能です。

一方で、例えば居住用のアパートの賃貸借など、契約が消費者と事業者で締結される場合は、消費者契約法の適用があります。そのため、消費者に対して不利な規定は消費者契約法10条の適用がされ無効になる可能性があります。

過去の裁判例だと、いわゆる「敷引き特約」(退去時の敷金の返還に際して、退去時の修繕費用と共に居住開始からの年数に応じて一定額を差し引く特約)について、敷金からの控除率、賃借人の居住年数、敷引き金が月額賃料の何倍にあたるのか等を考慮して、敷引き特約について消費者契約法10条を適用し無効とした裁判例があります。

特約を結ぶ場合、「こんな特約を結んでも、賃借人にあまりにも不利な内容なので、無効になるのでは?」という観点から、その有効性について検討する必要がございます。

 

 

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