弁護士コラム
法定相続情報証明書とは?
1 法定相続情報証明制度とは
相続が発生すると、不動産の登記や預金口座の解約、保険金の請求、相続税の申告など様々な手続きが必要となりますが、その度に誰が相続人なのか(窓口に出向いている自分が、ちゃんと相続人であること)を証明するために戸籍の提出が必要となります。これらの手続きごとに戸籍の束を提出するのは戸籍の発行手数料だけでも馬鹿にならず、手続きとしても煩雑な面があります。そこで、相続の手続きをスムーズにするために法定相続証明制度が始まりました。
法定相続情報証明制度とは、登記所(法務局)に戸籍謄本等の束や相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば、登記官がそれらの書類を確認した上で、法定相続人が誰なのか証明してくれるという制度です。これにより、これまで必要だった戸籍謄本一式の提出が不要となり、「法定相続情報一覧図の写し」1枚で手続きができることとなりました。
2 法定相続情報証明制度のメリット
①銀行の預金口座解約手続と相続登記の手続の同時進行が可能
不動産について相続登記の手続をする場合、一度法務局に戸籍謄本一式を提出すると、手続が完了するまで返却してもらえないことが通常です。そのため、相続登記の手続をしている間は預金口座解約の手続等その他の相続手続を進めることができません。
しかし、法定相続情報一覧図の写しがあれば同写しを法務局に提出している間に銀行には戸籍謄本一式を提出して手続を同時に進めることが可能です。
②複雑な相続関係の場合に便利
代襲相続が発生する場合等、相続関係が複雑になる場合には戸籍謄本の数も多くなりがちです。その上数が多くなればなるほど戸籍謄本の束を1つ集めるのに高額な手数料がかかる場合もあります。
このように戸籍謄本の数が多くなる場合、法定相続情報一覧図の写し1枚だけですませることができる点でメリットがあるといえます。
③法定相続情報一覧図の写しの発行手数料が無料
一覧図の写しは何部発行しても無料です。戸籍謄本一式を何部も集める場合には手数料が高額になる場合もあるので、一覧図の写し1枚で手続がすむ上、手数料も無料な点はメリットといえます。
3 法定相続情報証明制度のデメリット
①一度は戸籍謄本等を集めて法定相続情報一覧図を作成しなければならない
法定相続情報証明制度は、法務局にさえ行けば何もせずに一覧図を作成してもらえるという制度ではありません。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を自身で集めた上で、相続人の一覧図を自身で作成しなければなりません。一覧図の作成には戸籍謄本を読み解く力が必要なので、経験のない方にとっては難易度が高いかもしれません。
②専門家に頼むと費用がかかる
①で述べたとおり、自身で戸籍謄本一式を集めたり、相続一覧図を作成したりするのは、相続人の数などにもよりますが一般の方々にとっては難易度が高いものである場合もあります。そうすると、弁護士や司法書士等の専門家に作成を依頼したいところですが、専門家に依頼する場合には数万円程度の費用がかかってしまいます。
4 おわりに
以上、法定相続情報証明制度についてご説明させていただきました。同制度の利用をご検討の方、相続のお手続でご不明な点がある方は弊所までお気軽にご相談ください。