弁護士コラム

遺産を使い込んだ場合の対応について①

 

亡くなった方の財産が、実は使い込まれていたということは、相続手続において決して珍しいことではありません。特に多いのは、預貯金の使い込みです。

このような遺産の使い込みについて、死亡後に使い込んだケースと、死亡する前に使い込んだケースに分類した上で、検討してみます。

【死亡後に使い込んだケース】

このような場合、既に遺産であったはずの預貯金が使われて存在しないため、遺産分割の中で解決することは当然にはできず、その使い込みをした人物に対して、不当利得返還請求あるいは不法行為に基づく損害賠償請求を行う必要がありました。

しかしながら、令和元年7月1日から施行されている改正相続法によって、遺産分割前に相続人の一人により遺産が使い込まれる等された場合に、その使い込まれた部分を遺産とみなすことのできる制度が設けられました。

第九百六条の二   遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共    同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。

2  前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。

この条文が出来たことによって、死亡後に預貯金を使い込んだ相続人がいた場合、他の相続人の了解を得ることによって、その使い込んだ分を遺産に含めることができるようになりました。その結果、例えば既に使い込んだ分については、使い込んだ者が取得した形にして、他の相続人は、その他の遺産を多めに取得し、公平な遺産分割ができるようになったのです。

もっとも、事案としてはるかに多いのは、死亡前に遺産を使い込んだケースです。

次回は、このケースについて記事を書きたいと思います。

 

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