弁護士コラム
債権法改正 時効
Q 消滅時効の期間が改正されたと聞きました。具体的にはどのように変わったのですか?これまでの契約により発生している債権についても改正法が適用されるのでしょうか?
A 原則として、「債権者が権利を行使することを知った時」(主観的起算点といいます)から5年、「権利を行使することができる時」(客観的起算点といいます)から10年となりました。施行日である2020年4月1日以降に発生した債権について、改正法の時効期間が適用されることとなります。
以下、解説いたします。
1 消滅時効の起算点
改正法においては、「債権者が権利を行使することを知った時」
(主観的起算点)と「権利を行使することができる時」(客観的起算点)の
2つの消滅時効の起算点を設け、原則として主観的起算点から5年、
客観的起算点から10年という2つの仕組みを採用しました。
2 消滅時効の期間は4つに分けられます
①原則(新166条1項)
主観的起算点から5年
客観的起算点から10年
②定期金債権(新168条1項)
主観的起算点から10年
客観的起算点から20年
※「定期金債権」とは、ある期間、定期的に債権者が債務者から一定額の金銭など
給付を受けることができる債権のことをいいます。
具体例としては、年金が定期金債権にあたります。
③不法行為による損害賠償請求権(新724条)
損害及び加害者を知った時から3年
不法行為の時から20年
※「不法行為による損害賠償請求権」の具体例としては
交通事故により生じた治療費や慰謝料等の損害賠償請求があります。
④生命・身体の侵害による損害賠償請求権
損害及び加害者を知った時から5年(新724条の2)
客観的起算点から20年(新167条)
旧法において複雑だった消滅時効の規定を統一化単純化する観点から、
職業別の短期消滅時効(旧170〜174条で細かく分けられていました)及び
商事消滅時効(旧商法522条では5年でした)を廃止し、
上記②③④以外の債権については全て①の主観的起算点から5年、
客観的起算点から10年と定め、よりわかりやすい規定となりました。
3経過措置について
施行日である2020年4月1日より前に発生した債権については旧法が適用され、
施行日以降に発生した債権でありかつその原因である法律行為が施行日前に
されたものでないものについては改正法が適用されることになります。
たとえば、2020年4月1日より前に請負契約を締結し、2020年4月1日
より後に請負人が仕事を完成させたため、報酬債権が発生した場合は
報酬債権の原因である請負契約自体は2020年4月1日より前になされているため
「原因である法律行為が施行日前にされたもの」といえ旧法が適用されることに
なります。
もっとも、不法行為債権については特則が設けられ、生命・身体侵害による
損害賠償請求権については、施行日に3年(旧724条前段)が経過してない場合には
改正法が適用される、つまり時効期間が5年に延びる事になります。
すなわち、2017年3月31日以降に発生した、生命・身体侵害による
損害賠償請求権については時効期間が5年となります。