弁護士コラム
代償分割について
代償分割とは?
遺産分割の方法は、現物分割、代償分割、換価分割の3つの方法があります。
現物分割とは、例えばひとつの土地を共有にしたり、複数の物を相続人確認に取得させたりと、物の性質や形状を変更することなく分割します。しかし、物の価値によっては法定相続分とおりに分割することはできず、相続人間の平等にならない場合もあります。
今回説明する代償分割とは、相続財産を一部の相続人に取得させ、法定相続分を超える部分については、他の相続人に対して金銭を支払わせる方法による分割になります。
代償分割ができるのはどのような場合か
代償分割はいつもできる分割ではなく、以下のような「特別の事情」が必要です。
まず、相続財産についての事情として、
①遺産を分割することが物理的あるいは社会的に不可能な場合 です。「社会的に不可能な場合」とは、土地を分割しても細分化されたり、地形が悪くなって著しく価格が下がってしまったりする場合が挙げられます。
又は、②現物分割が可能であっても、事業用の財産を事業の承継者に継承させる、農業の継承者に農地を継承させる必要があるなど、誰かに特定の遺産を使わせる必要がある場合 があげられます。
そして、③相続人に関する事情として、代償金支払債務を負担させられる者にその支払い能力がある場合 でなければなりません。(最決平成12年9月7日)
もっとも、①~③の事情がなくとも、相続人間で法定相続分を超える部分について、金銭で支払う旨の合意がある場合には、代償分割をすることができます。
遺産分割協議で定めた代償金が支払われない場合はどうなる?
遺産分割協議で定めた代償金が支払われない場合であったとしても、相続人間で一度合意した遺産分割協議を相続人1人の意思で解除してやり直すことはできません(最判平成元年2月9日)。
そのため、相続人の1人に他の相続人に対する金銭の支払いなどの債務負担をさせる際は、後の不履行がある場合に備えて、不動産の登記の移転との同時履行または金銭の支払いの先履行を求める等の方法をとると良いと思われます。
上記のような方法をとれずに、代償金が支払われない場合は、遺産分割後の紛争調整調停を申し立てる必要があります。
調停でもまとまらない場合は、訴訟を提起して代償金の支払い請求をする必要があります。
以上